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 2015.01.24 Saturday
伊藤正一「定本 黒部の山賊」
伊藤正一「定本 黒部の山賊」
 北アルプスの雲ノ平と言えば、伊藤新道の伊藤正一さん。昭和39年に刊行された「黒部の山賊」が定本となって2014年に出版された。表紙は一目でそれと分かる畦地梅太郎の版画。1923年生まれの伊藤さんは90歳を超えるがまだまだ元気。高瀬ダムによってバスもなくなり、廃道になってしまった伊藤新道の復興をまだ狙っている。
 そんな伊藤さんが黒部源流地域を開拓した昭和20年代から30年代初頭にかけての山賊(猟師)たちとの交流録である。彼らがあの水平歩道(旧日電歩道。今は立山黒部アルペンルートになっている資材運搬用道路を作るためのそのまた資材運搬道路の一部 )を開削したそうだ。足元は200mの絶壁で歩くだけでも怖い道を鑿だけで開拓できたのは彼ら以外には居なかっただろう。あれがなければ黒部ダムもできなかったわけで、下界では暮らせない彼らが下界で使う電気の元を作ったわけだ。
 副題に「アルプスの怪」とあるようにここには科学では説明できない怪奇現象や超常現象も多数収録されている。
 人の3,4倍の速度で山を歩き、カモシカ1000頭、クマ300頭を仕留め、歩きながらイワナをどんどん釣り上げる山賊たち。初期の雲ノ平と黒部源流の景色が行ったことのない人の頭にも思い浮かんでくる。

 本書は名著の復刻なので、その後に発生した事件にはあとがきなどでも触れていないが、伊藤さんが経営する山荘のひとつ三俣山荘については、以前林野庁との間でトラブルがあり、一時は山荘撤去の危機にあったことを記憶している。山荘側の主張であるが、主な内容はこちらに記載されている。
* by 多摩の岳夫 * 17:12 * 山と自然の本 * comments(0) * - *
 2014.10.30 Thursday
山と溪谷 田部重治撰集
山と溪谷 田部重治撰集
「新編 山と渓谷 (岩波文庫)」の電子版かと思ってkindle版を購入したら、底本が違った。編集者によるあとがきを見て初めてわかった。どおりで全く記憶にない文章が多かったわけだ。おかげでゆっくり読むことができた。
 それにしても昔の人の足の速いこと。上高地を未明に出発して槍ヶ岳日帰りなんてことを登山道もなく梓川を遡行しながらやっている。しかも、それは靴ではなくて草鞋のおかげだという。当時の靴がどんなものかわからないが(草鞋も当然知らないが)。
 剱岳や鹿島槍には何度か案内人の長次郎を伴っている。長次郎谷に名を残すあの長次郎である。彼の岩場や雪渓での間違いのない見極めには田部も感嘆しきり。長次郎谷の隣にある平蔵谷は当然、佐伯平蔵が開いたためと思っていたが、実は長次郎のほうが早かったという。

新編 山と渓谷 (岩波文庫)
* by 多摩の岳夫 * 22:00 * 山と自然の本 * comments(0) * - *
 2013.10.19 Saturday
志水哲也「日本の幻の滝」
志水哲也「日本の幻の滝」
 先日読んだ著者の「生きるために登ってきた」で存在を知った写真集「日本の幻の滝」を見てみた。
 知床、白神、飯豊、奥利根、尾瀬、菅平、立山、剣沢、大台ケ原、屋久島の滝をテーマにした写真集である。 観光客が歩かずに見られるのは立山の称名滝と船から見られる知床の滝あたりだろうか。ぼくも大昔、観光客のひとりとして称名滝と知床の滝を見た事実は覚えているが、その時の印象などはすっかり忘れている。
 直前に読んだ「生きるために登ってきた」の中でこれらの滝を撮影するための苦労が書いてあり巻末の解説にも掲載されているので、ぼくのような沢の素人が見てもプラスアルファの楽しみがある。
 
 水量豊かな表紙の滝は尾瀬の三条の滝。雪解け水を集めた最盛期の落差130mの滝の様子である。
「三条の滝に比べたら、日光の華厳の滝なんて、子供だましだね」と父が昔よく言っていたのを思い出す。華厳の滝は落差97m。あれより高さが30mも高く、幅は何倍もある。
 そういえば華厳の滝も小学校の修学旅行で見ました。
* by 多摩の岳夫 * 23:10 * 山と自然の本 * comments(0) * - *
 2013.10.15 Tuesday
志水哲也「生きるために登ってきた――山と写真の半生記 」
志水哲也「生きるために登ってきた――山と写真の半生記 」
 1965年生まれの志水哲也、執筆当時(2011年4月)は40代の後半。
 彼の著者や写真集は2006年ごろ良く読み、その著書と写真集のいくつかは(珍しく)今でも手元にある。
 氏の山や黒部に関わるきっかけの話は、 「大いなる山 大いなる谷」「黒部へ―黒部八千八谷に魅せられて」などでも一部が語られているが、本作は「半生記」とうたっているだけに幼少の記憶から、高校生の頃、当時の最長の列車「富士」で逃げ出すように西鹿児島(今は鹿児島中央という)まで行きそのまま屋久島、夏休みに南ア全山縦走、北ア全山縦走、そして岩へ、雪へというクロニクルが続き、黒部に至る。前半はその大胆な山行スタイルとは逆に(いや、だからこそか)とても暗い気持ちでいる。もちろん山では至福を感じるときはいくらでもあるが、「このあと、自分は何をすればいいのか」と常に悩んでいる。その姿は基本的には今も続くのだが、山ではなく写真を選び、写真のために地元に住み、出版のためにいろいろな人との交流が始まっていく。
 その頃、NHK「黒部 幻の大滝に挑む」などで徐々にマスメディアでも活躍をし始め、ぼくもその頃から彼の活動を知ることになり、氏の著作や写真集を眺めることになるのだが、その後の活動は知らなかった。

 その後、白神、知床、屋久島(たまたま世界遺産)に的をしぼり、執筆当時は小笠原(のちに世界遺産)にも乗り出す。「厳しい山の写真だけでは写真集ではなく記録集だ」と写真集を最初に出そうとしたころに編集者に言われて、山だけでなく森や花、動物にも目を向けていく。
 刊行が2011年4月であり、東日本大震災、原発事故の直後でもあるため、あとがきに当時の生々しさが残るが、本書の前半で「死んでも登る」が信条で、「よく死なないものだ」と思わせた彼の歩き方が、歳を経るごとにだんだんと死の臭いよりも生の輝きが出てくるのに安心した。

 彼のWEBサイトを見ると、あのすばらしい写真が額装の全紙で5万円で購入できる・・・。
* by 多摩の岳夫 * 23:32 * 山と自然の本 * comments(0) * - *
 2011.05.29 Sunday
改訂新版 カシミール3D GPS応用編 刊行記念
わたくしもほんの少しだけ載っけてもらった「改訂新版 カシミール3D GPS応用編」が5月28日に刊行されました。
その記念というわけではないですが、久しぶりにGPSのページを更新しました。

更新したのはGoogleEarthやGoogleMapsにログを掲載する方法で、知っている人には当然ですが・・・。これも最初にカシミールとGPSをつないでログをPCに落とせるから可能なのであって、カシミールはGPSのポータルになっているなあ、と実感した次第です。


* by 多摩の岳夫 * 17:28 * 山と自然の本 * comments(0) * - *
 2010.08.24 Tuesday
改訂新版 カシミール3D入門編
改訂新版 カシミール3D入門編
 あの、「カシミール3D入門編」が8年ぶりにリニューアルした。詳細はこちら
 新旧を見比べてみると構成に大きな変化はないものの、Windows7への対応など時代の変化を反映しているほか、旧版ではカラーとモノクロが混在だったものがカラーに統一され見やすくなった。記述構成には変化はあまりないが、記述量は旧版148ページに対して新版は192ページとかなり増えており、初心者により優しい入門書になるとともにGPSに心拍計の話題が登場するなど、特にGPSに強いカシミール3Dの片鱗も見られる(偉そう・・・)。

 そして付属地図もリニューアル。
 従来の、50mメッシュ(全国)、20万分の1(全国)、5万分の1(関東甲信越)に加えて新たに、2万5000分の1(関東甲信越)が収録された。
 2万5000分の1は地図の基本になるためデータも新しいことが多い。例えば5万図だと上高地手前の安房トンネルは記載されていないが、2万5000ではちゃんとトンネルがある。今回収録された地図と旧版の地図を比べると、例えば東京近郊の圏央道は旧では日の出IC止まりだが、新は八王子JCTで中央道に接続している。
 というようなこともあり2万5000分の1地図は重要なのだ。
 (ただし幹線道路の情報は山の地形や登山道の更新頻度が違うので、新しい地図だからといって登山道も同時に修正されているわけではない。念のため)

 最近は地方のホテルでも客室にLANが装備されネットに接続できることが多いが、出張のおりに近隣の景色をカシミールで描くことを密かな喜びとしている人(誰のことだ・・・)には、オフラインでも使える地図データが新しくなったことはありがたい。
 「GPSマスター編」など2冊の続編も収録地図ともども順次リニューアルしていってほしい。

 P.S 新版111ページに拙作ソフトの紹介がありました。Windows7での稼働確認してませんが・・・。
* by 多摩の岳夫 * 21:06 * 山と自然の本 * comments(0) * - *
 2009.12.27 Sunday
沢野ひとし「山の時間」
沢野ひとし「山の時間」
 イラストレータの著者が雑誌「山の本」に連載したもののまとめ。著者の心に残る山の思い出を綴ったもので、単なる山紀行ではなく、著者の思いが強い。
 椎名誠の古くからの友人である著者の本のテーマは、山か女性(完全に私小説)しかなく(交友関係は椎名誠が書いているので)、山の本でも女性を引きずっていることが多いが、この本は「山の本」に連載したものだけに、女性絡みは少なく、むしろ自分を山に導いてくれた兄やいつの間にか自分を超えてしまったもと不良の息子など家族についての思いが多い。
 とはいえ、じめじめしたものではないし、著者自身のスケッチもシーナ本にあるような意味不明なイラストではなく、相応にまともなスケッチでリラックスして読める本である。
* by 多摩の岳夫 * 09:31 * 山と自然の本 * comments(0) * - *